’99年秋・・私は5日間ほど愛知県を訪れました。
愛知県はいつも素通りしがちだけど,
一旦,足を踏み入れてみると,
その奥行きの深さを感じます。
私は,ふらっと電車を降りて,
新涼の愛知県に触れてみました。
写真は,岡崎市を流れる乙川に咲いてた秋の彼岸花です。(HAMU撮影,以下同じ)
壁紙は,有松絞の紋様の一つ「巻上絞り」をモチーフにしています。(有松絞商工組合のパンフレットからいただきました。)
愛知は,歴史と文化が息づく土地。
信長・秀吉・家康の三英傑が誕生した土地でもあるし,
近代・現代の日本の産業を育んだ土地でもある。
愛知に一旦足を踏み入れてみると,その奥行きの深さに驚く。
そして,日本有数の大都会名古屋を抱える県にも関わらず
人々も街もなぜか純粋で明るい。
愛知は,旅に疲れ道に迷っていた私をとても温かく迎えてくれた。
「中京競馬場前」駅で下車した。競馬をやりに行った訳じゃなくて,桶狭間の古戦場を見たかったからだ。
歴史の教科書でも非常に重要な事項として「桶狭間の戦い」(1560年)がある。
「京に上ろうとする今川義元が,道中の田楽狭間で休憩がてら田楽舞を楽しみながら酒を酌み交わしている。」という情報を得た織田信長が奇襲作戦を企て,その結果今川軍を破り,天下統一への足がかりにしたというものである。
しかし,実は桶狭間という地名は2カ所あって,両方ともに今川義元の墓があるのだ。どちらが本当の田楽狭間はかはわかってないらしい。一つは後で述べる有松の周辺,そしてもう一つは今回訪れた豊明だ。この2カ所の距離は3キロくらい。
一応国の史跡に指定されているのは,こちらの方だということなので,それを信じることにしよう。
あと,桶狭間古戦場から駅の反対側10分くらい歩いたところに中京競馬場がある。ここはGIレース高松宮杯などが行われるコースである。
私は競馬は最近はほとんどやっていないが,中央競馬の競馬場は,函館と福島以外は全部行ったことがある。最近の競馬場はどこもグレーな雰囲気がなくなってきているが,ここの競馬場もかなり明るい雰囲気だ。
左・・桶狭間古戦場の入り口 右・・今川義元の墓
(興味がなければ全然つまんないところではあるが・・)
中京競馬場の入口,スタンドはガラス張りできれい。さすがJRA,儲けてるだけのことはある。
(コースを撮りたかったが,レースをやってない日だったので・・)
信長が戦国時代に居城とした清洲城を訪れた。
名古屋の中心からは電車で10分ほどなのに,非常に静かなたたずまい。休日なのにほとんど人はいない。
かつての尾張中心の城は,名古屋城にとって変わられてから,静かに時の経つのを見守っている感じ。
ところで,駅へ戻ろうとして,道を見失い,1時間ほど歩き回った。(3人くらいに道を聞いてみんな親切に教えてくれたのに,自分がちゃんと理解できてなくて・・)
左:清洲城と五条川に架かる大手橋(形式としてはやはり古城という感じがする。)
中:鯱と城から見える景色(昔はここも金鯱だったらしい・・・)
右:信長の像(いかにも気の短そうな表情・・笑)
牛頭天王の総本山津島神社を訪れた。織田,豊臣,徳川三英傑から授福の神としてあがめられたという。
訪れた日は,丁度秋祭りの最中で非常にラッキー,笛太鼓の音が聞こえて大変にぎやかであった。
調子に乗っておみくじなどをひいてみた。吉だったんだけど不思議な結果が・・・
「旅は控えよ」とか書いてるけど,旅の最中なんだけど・・・
あと,結婚運は「今の人が最善」となっていたが,今の人がいない場合はどうするの??(笑)
左:津島神社の本堂(たそがれで,暗い感じだが,秋祭りの日で非常ににぎやか)
中:朱塗りの楼門(秀吉が寄進したものらしい)
右:山車と人形の舞い(各地の山車が勢揃いで壮観だった)
徳川家康が生誕し,産湯をつかった岡崎城を訪れた。
岡崎という街は,駅前辺りはガス灯の商店街の雰囲気を除いては,どこにでもある単なる地方都市という感じであるが,
岡崎城のある岡崎公園の周辺は大変美しい風景であった。
特に乙川は白鷺が時折飛ぶ,静かな清流であり,噴水のある周辺の河川敷の草むらには何組かの若いカップルが寝そべっている。
なんとなく,ほほえましい感じだ。
桜の咲く季節は更に美しいだろう。
ところで,岡崎は八丁みその本場ということで,岡崎城でみそ田楽こんにゃくをいただいた。
初めて知ったのだが,「おでん」というのは田楽の言い換えであり,室町時代の田楽の舞台に形が似てるから,田楽と言うのだそう。
だから,本来のおでんの正しい姿はみそ田楽ということ。これ,茶屋のオヤジが言っていたお話。
左:岡崎市内を流れる乙川と噴水(美しい白鷺がいたので写したかったが,近づきすぎて逃げられてしまった)
中:岡崎城の天守閣(復元の城ではあるが,清洲城あたりと比べると,明るく雄大な城という感じ)
右:家康の像(気性の激しい信長に比べていかにも大物)
八丁みそ田楽(おいしいけど,ちょっとお茶がないと,辛くて・・)
有松・・・今回の愛知の旅で最も訪れてみたかった場所である。
旧東海道の面影の残る街並みと浮世絵時代の伝統工芸有松絞の美に触れてみたかったからである。
名鉄有松駅を降りてすぐ,趣のある木造建築が並ぶ街道へと出る。
荘厳な呉服店から小さな絞り小物の店まで,瓦屋根の家々が非常に雰囲気を感じる。
今まで行った街道でも,これほど集中して昔のたたずまいを残している場所は少ないと思う。
有松・鳴海絞会館を訪れた。1階はハンカチから着物まで,様々な絞りが販売されている。
2階は展示館で,古い時代の絞りや工程に使われる道具が展示されている。そこでは伝統工芸士のおばあちゃん(名前を聞いていたのだが,失念してしまった。)が絞りの実演をやっている。なんでも70年以上も絞りをやっているのだそう。
あと,絞り体験講習会もやっていた。参加したかったのだが,時間がなくて見てるだけだった。少し触らせてもらったが,繊細な作業でこれはかなり神経を使いそうだ。
この世界には共通して後継者不足が問題になっているが,有松絞りも例外ではない。ただ,文化財の枠にもとらわれずに常に新しい試みがされている工芸品であり,街を挙げての意気込みを感じるので先行きは比較的明るいようだ。よく「名古屋の女性は働き者だ」とか言われるが,確かにこういう場所に行くとそのような雰囲気を感じる。
有松の街並み。このような町並みが隣の宿場町鳴海まで続く。
左:有松山車会館 右:絞り問屋「井桁屋」(愛知県重要有形文化財)
左:有松絞の一種で「鹿子絞り」と言われるもの
右:工程を人形や浮世絵で表している。
左:絞りに使われる道具類
右:おばあちゃんですが,伝統工芸士の方です。絞りの実演をやっているところ。
名古屋駅から名鉄で一駅行くと栄生(さこう)という駅がある。
ここには,レトロ調の工場風の建物に特徴があるちょっと変わった博物館「産業技術記念館」があった。
この博物館は要するにこの地方最大の企業トヨタの資料館である。
日本の前近代の中心産業「繊維工業」と,現代産業「自動車工業」の歴史について機械を中心に展示されている。
トヨタ以外の機械も展示されていて,テーマが珍しく非常に興味深い博物館であった。
あと,隣には食器のノリタケの工場があって見学もできるらしいが,時間がなくて残念。
博物館の外観
繊維コーナー1
左:繊維の材料,左の方が化学繊維で右の方が綿,羊毛,苧麻などの自然材料
右:伝統工芸の織物が多数展示されている。(人形は小千谷縮を織っているところ)
繊維コーナー2
前近代的な力織機,これだけ並ぶと壮観である。
自動車コーナー
左:金属加工のロボット
右:自動車製造のオートメーション化の発展について展示されている。
なお,自動車に関しては,愛知県長久手町にトヨタ博物館があり,こちらの方がクラシックカーとかがあって楽しいらしい。
大須・・ここも特に行きたいと思っていた場所の一つである。
名古屋の下町情緒あふれる街で,ういろう,きしめんなどの名古屋名物もここに来ればよい。
しかし,30分ほどしか時間がなくて素通りだったのが残念・・・
この日は栄で約束があったため,大須から栄に行こうとしたが,地下鉄の場所が分からず,結局テレビ塔を目指して栄まで歩いて行った。
道中には,若宮大通りなどちょっと寄ってみたくなる楽しいスポットがたくさんあって,う〜ん,素通りはもったいない。
大須は,東京で言えば浅草と上野と秋葉原をすべてミックスして凝縮したような街。
演芸場とかもあったりして,雰囲気は楽しい。
左:大須は名古屋の電気街でもある。アメ横なども混在してて,買い物のしやすさでは秋葉原や日本橋より上かも。
右:大須観音(ここがどういう由来があるのかは調べられなかったが,とにかく壮観さは名古屋パワーの源って感じする)
栄の名古屋テレビ塔。100M道路といい,ここだけ見ると札幌に似ているが,
街そのものスケールはやっぱり名古屋の方が大きい。
名古屋市内はとても整然とした区画整理がされており,地図があれば道に迷うことはまずない。(と,思う)
名古屋にはどこへ行ってもかなり個性があるが,大曽根もさりげなく主張してる街である感じがする。
名古屋初心者なら,まずはナゴヤドーム。ここは,他のドーム球場に比べるととてもシンプルで派手さがない。
ただ,駅から歩いて20分くらいかかるのが難点だなあ。(地下鉄延伸工事中なので,これができれば便利になるかも)
しかし,大曽根駅はJRと地下鉄と名鉄が走っているんだけど,どの路線にも「ナゴヤドームは安くて早い●●電車を」という案内掲示がされている。
よそ者で分からない人はどれに乗ればいいんだろう。
もう一つの名所に徳川美術館がある。都会の真ん中に突然小さな森があるのであるが,その中に美術館はある。
美術館とはいっても,要するに,徳川時代の道具,書物,絵巻などが展示された博物館だ。
葵の紋所が徳川らしいところではあるが,この旅行中葵の紋所はあちこちにあって,ちょっと見飽きたような。
あと,大曽根駅前の商店街も普通のアーケード商店街なのだが,ここでもなんとなく,名古屋を感じた。
ナゴヤドーム・・ドラゴンズ優勝の翌日だったが,試合がなかったせいか,球場は静まりかえっていた。
しかし,まわりは工事中が多くて,ここは,ドームが先にできて,まわりの環境整備は後回しという感じ。
徳川美術館:いろいろ解説のは面倒かな。。要するに徳川博物館なのだ。
今回,愛知を訪れている間に,中日ドラゴンズの優勝があった。
それで,名古屋駅(「名駅」という言い方が一般的)周辺のデパートはドラゴンズ優勝記念セールばかりであった。
どこへ行ってもドラゴンズの応援歌「燃えよドラゴンズ」を,耳から離れないほど聞いた・・。
人々もその雰囲気を味わっている。そこにも,名古屋の元気を感じた。
愛知県人すべてが全員がドラゴンズファンと言うわけではないが,ただ地元の活力の源となるチームであるいうことは間違いない。
名古屋駅南側にある身長6mのナナちゃんは,さしずめ,自由の女神ならぬ「名古屋の女神様」なのかもしれない。
名古屋は,おいしいものがたくさんあるし,楽しいところは数え切れないほどある。道行く人々も個性豊か。
しかし,名古屋の人々はどうもアピールがうまくないのか,それとも控えめなのか,個性をあまり表に出さない。
でも,そんな純粋なところがいいのかも。
ナナちゃんです。(見知らぬ親子がポーズまでつけてくれた。)
私は今まで,愛知県は数回訪れていた。また,通過なら何十回もしているのである。
一般的に,愛知県のイメージは,東京と大阪の間に挟まれ,地味で,悪く言えば中途半端なところだというのが他県人のおおかたの意見であろう。私も正直,特に愛知に何の感情も抱いていなかった。特に寄ってみたいとも思っていなかった。
しかし,今回,出張で割合ゆっくり愛知を訪れる機会を得て,愛知をいろいろ調べてみると,非常に興味をもつようになった。 愛知は,三英傑が生まれたように,ここは日本の文化の源なのである。そして,一旦興味をもち出すと,楽しいところが泉のように湧いてくる不思議な土地でもある。
今回の旅でいろいろ行ったつもりだけど,まだまだ,それでも愛知県のほんの一部しか見ていないらしい。
実際に愛知の人々と空気に触れてみると,その温かさに感動した。
ある人の言葉を借りれば,「愛」を知ることができる場所,それが愛知なのかも知れない。
愛知に尾張があるけれど,愛知の旅は終わらない。
(次回に行ってみたい愛知)
・名古屋城にもう一度行って再度名古屋を感じたい。
・おいしいものいっぱい食べたい。
・今回三英傑の中では秀吉にはあまり会えなかったので,小牧長久手あたりに行きたい。
・瀬戸焼にも触れてみたい。
・三河の中心都市豊橋をゆっくり訪れてみたい。
・知多半島や渥美半島の海の自然も味わいたい。
・名古屋のベイエリアの楽しいスポットにも行ってみたい。
・奥三河でハイキングも楽しそう。(愛知の山は結構秘境らしい)。
・桜の季節や,カキツバタの季節は特に美しいらしい。
・・・・・あ〜ん,もう行きたいところいっぱい・・・・
今回の愛知の旅では,たくさんの素敵な人々との出会いがありました。
私も,道を聞くなど,なるべくいろんな人に話し掛けてみることを心がけて,旅を楽しんでみたというのもあるが,
みんな親切で本当に温かく接していただきました。(それは,東京や大阪あたりとは違う温かさ)
それが私が愛知にはまるゆえんの一つでもあったかもしれません。みなさん,ありがとう。
(1)インターネット友達のホームページ
今回,特に親切にしていただいた,愛知県に住むインターネット友達でホームページを開いている方々です。
・のえるさん・・(のあの小舟)
ちょっと通な名古屋名物紹介がある。在名古屋の大手企業からのホームページからもリンクされている。
繊細なイメージながら,なぜか親しみがわく「戦うOL」さんです。
・アキラさん・・(Dora Ping)
ホームページは愛知周辺ドライブスポット(デートスポット?)の紹介など。
話題が豊富で,とても好青年です^^。
・さくらさん・・(さくさくランド)
働き者の名古屋の女性を象徴する看護婦さん。ホームページはハンカチなしでは見れないかも?
とても上品でやさしい人ですが,変なことをすると空手チョップが飛んできますよ。(笑)
・他にぐっちーさんという楽しい名古屋グルメの紹介をメールしてくれる,おもしろいお父さんもいらっしゃました。
(2)その他名古屋関係ホームページ
今回の愛知への旅にあたって特に参考にしたホームページです。
・ときめきNAGOYA
名古屋のうまいもの,トレンディなスポットなどの紹介など。
ドラゴンズ,グランパス情報もあって,名古屋にどっぷり浸かりたい人向け
・三英傑物語
信長・秀吉・家康はすべて愛知県出身。3人の年表からそれぞれのゆかりのスポット案内に飛べて,
観光案内としてもとてもわかりやすい。
・名鉄ホームページ
名鉄沿線紹介,各駅時刻表など。今回の愛知の旅は名鉄の乗り放題キップでまわりました。
そして,私はまたまた愛知を訪れてます。このことについては,別ページ「つれづれ愛知リピーターズ」にアップしていますので,こちらをご覧ください。なお,今後もどんどん更新していきます。